喜邑 (寿司) 玉川
ある日バスに乗って外を見ていたら、マンションの1階に寿司屋ができていた。特別気を引くような店構えでもないのに、「この店は絶対おいしい」という直感が走った。何故だか分からないけど、行かなければならない、と言うぐらい強い感覚だった。なので、何の前提知識もなく、ある日の夕方、一人でノコノコ店を訪れてみた。
バスから見たときには無かったが、営業中の時には大きなブルーの暖簾がかかっていた。その暖簾をくぐると、店は落ち着いた程よい広さだった。L字型のカウンター席が8席。テーブル席は無い。二人組の先客が二組いたが、「予約はしていませんが」というと、「お任せになりますが、よろしいですか」と聞かれ、結構ですというと、空いている席に案内された。
ガラスのネタケースはなく、木のネタ箱が二つ見えた。量は多くないが、上質のネタが並び期待が持てる。奈良の春鹿を飲みながら待つと、マグロの赤身のお通しに始まり、白身の魚のお造り、笹の葉に載せて焼いた穴子等素材に手を加えたつまみが次々と出された。これだけでも嬉しいが、お目当てはやはり寿司だ。これが素晴らしい。小振りの握りで、形も綺麗で、食べるとはらりと口の中で広がる。
印象が強かったのは、まずカンヌキと呼ばれる秋刀魚ぐらいの大きさのサヨリで、脂も載ってとても旨い。それから、目の前でむいてくれる赤貝や鳥貝。むきたては、香りが違う。筍を細く切って巻いてくれた海苔巻きや干瓢巻きも絶品だった。お酒を2合飲んで、大満足なぐらい食べて1万円しなかった。このレベルの料理だと本当にお値打ちだ。申し訳ない気さえする。
九代目林家正蔵(こぶ平)似の若い主人が一人で全てやっている。毎日築地にバイクで行って、大好きな魚を直接仕入れ、休みの日には、他のお店に寿司を食べに行くという。本当に寿司が好きで好きでたまらないという主人だ。儲けより客の満足を大事にするこの店は、かならず大化けすると感じた。
このお店、文芸ジャーナリストの重金敦之氏が文芸春秋社「本の話」の「酒屋に一里本屋に三里」で取り上げているが、それ以外ほとんどまだマスコミにもインターネットにも掲載されていない。あまり込んで予約が取れなくなっても困るが、こんな良い店にもっとお客が来てほしいなぁと言う気持ちもあって、ブログに載せることにした。是非至福の時を皆さんも味わってもらいたい。
店は、終日完全禁煙。殻からはずしたての鳥貝の磯の香りも、小鯛に摺りかけた微かな柚子の香りも、そして鰹のたたきの藁で燻したクフンとした香りも、何にも邪魔されず鼻腔に達し、食欲を誘う。
喜邑(きむら) 玉川3-21-8 3707-6355(必ず予約を)
昼 11:30-14:00 (火、金、日のみ営業)
夜 前半17:00-19:30 後半19:30-22:00
月曜日定休
コースのみ 5,250円 8,400円 12,600円 (但し5,250円は昼のみ)
[追記]
カウンター8席だが、満席になるとペースが乱れるのだろうか、5~6人になるとあとは断ってしまう。だから、なかなか席が取れなくなっている。このブログを見てこられる方もいるようで、最近3日連続予約を断られてしまった。そのときは、ブログから削除しようかと悩んだ。
| 固定リンク
| コメント (8)
| トラックバック (0)
|


